「治験(ちけん)」という言葉を、ニュースや募集サイトで見かけて調べに来た方へ。このページでは、治験という言葉の意味、新しい薬が世に出るまでのどこに治験があるのか、第1相から第3相までの中身、参加する人を守っているルールまでを、専門知識がなくても読めるように説明します。
◾️ 30秒でわかる治験
- 意味:新しい薬を国に承認してもらうために、人で効き目と安全性を確かめる試験
- 語源:「治療の臨床試験」の略
- 段階:第1相・第2相・第3相の3つ(発売後に行う第4相もある)
- ルール:薬機法とGCPという国の決まりに従って実施される
- 参加する人:第1相は健康な成人、第2相以降は患者さんが中心
治験とは
治験とは、開発中の薬(くすりの候補)が本当に効くのか、そして安全に使えるのかを、人に協力してもらって確かめる試験のことです。
日本では、薬を自由に売ることはできません。国(厚生労働省)の承認を受ける必要があり、その承認を申請するためのデータを集める試験が治験です。治験で有効性と安全性が確かめられた薬だけが、病院で処方されたり、薬局で販売されたりするようになります。
「治験」という言葉の意味
治験は「治療の臨床試験」を略した言葉とされています。
「臨床(りんしょう)」は、実験室の中ではなく実際に人を前にして行う、という意味で使われる医療の言葉です。つまり治験は、治療に使うことを目指した薬を、人を対象にして試す試験ということになります。
なぜ人で試す必要があるのか
薬の候補は、いきなり人に使われるわけではありません。動物などを使った試験で、危険がないかを先に調べます。
ただし、動物で安全だったからといって、人でも同じとは限りません。効き方も、体の中での分解のされ方も、人と動物では違います。どのくらいの量が適切なのか、どんな副作用が出るのかは、最終的には人で確かめるほかに方法がありません。
だから治験が必要になります。そして人で試す以上、参加する人を守るための仕組みが厳しく定められています(後述)。
くすりが世に出るまで|治験はどこにあるのか
治験は単独で行われるものではなく、長い開発工程の一部です。全体を並べると、治験の位置づけがわかりやすくなります。
- 基礎研究:薬になりそうな成分を探す段階。数千〜数万の候補から絞り込みます。
- 非臨床試験(ひりんしょうしけん):人に使う前に、動物や細胞で効き目と毒性を調べる試験です。ここで薬物動態(体に入った薬が、どう吸収され、どこへ運ばれ、どう分解され、どう体の外へ出ていくか)も確認します。
- 治験:人を対象に、第1相から第3相まで段階的に実施します。
- 承認申請・審査:治験のデータをまとめて国に提出します。PMDA(医薬品医療機器総合機構)が審査し、厚生労働省が承認します。
- 発売:ここでようやく「くすりの候補」が「くすり」になります。
- 発売後の調査:実際に多くの人が使い始めてから見つかる副作用もあるため、発売後も情報が集められます。
基礎研究から発売まで、一般的に9年から17年ほどかかるとされています。そのうち治験が占めるのは3年から7年ほどで、開発工程のなかでもっとも人手と時間がかかる部分です。
治験の3つの段階|第1相・第2相・第3相
治験は、いきなり多くの患者さんに使うことはしません。少人数から始めて、段階的に対象を広げていきます。この段階を「相(そう)」または「フェーズ」と呼び、第1相・第2相・第3相の3つに分かれます。
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| 段階 | 対象 | 人数の目安 | 主に調べること |
|---|---|---|---|
| 第1相(フェーズ1) | 健康な成人が中心 | 数十人 | 安全性、体内での動き(薬物動態)、使える量の範囲 |
| 第2相(フェーズ2) | 少数の患者さん | 数十〜数百人 | 効き目が出る量、使い方、副作用 |
| 第3相(フェーズ3) | 多数の患者さん | 数百〜数千人 | 既存の薬やプラセボと比べて本当に効くか |
第1相試験|まず安全性を確かめる
非臨床試験を終えた薬の候補を、少人数の健康な成人に、ごく少量から使ってもらう段階です。「第一相試験」「フェーズ1」「Phase I」と書かれることもありますが、いずれも同じものを指します。
目的は効き目を見ることではなく、安全に使える量の範囲を見つけることと、体の中での動き(吸収・分布・代謝・排泄)を調べることにあります。少量から始めて段階的に量を増やしながら、体調の変化を細かく確認していきます。
健康な人が対象になるのは、病気の影響を受けない状態で薬そのものの性質を調べるためです。ただし、抗がん剤のように健康な人に使うべきでない薬では、第1相から患者さんが対象になります。
第2相試験|効く量と使い方を探す
第1相で安全性の見当がついたら、次はその薬が対象とする病気の患者さんに、少人数から使ってもらいます。
どのくらいの量を、どのくらいの間隔で、どのくらいの期間使うと効果が出るのか。副作用はどの程度か。いくつかの量を比べながら、最も適した使い方を探る段階です。「探索的試験」とも呼ばれます。
第3相試験|本当に効くのかを検証する
最後に、多数の患者さんを対象として、第2相で見つけた使い方が本当に有効かを確かめます。「検証的試験」とも呼ばれます。
ここでは、すでに使われている標準的な薬と比べたり、標準的な薬がない場合はプラセボと比べたりします。治験全体のなかで、もっとも規模が大きく、期間も長くなる段階です。
プラセボ・無作為化・二重盲検とは
第2相・第3相でよく出てくる3つの用語です。いずれも「効いた気がする」を「本当に効いた」と取り違えないための工夫です。
- プラセボ(偽薬):見た目は治験薬とそっくりですが、有効成分が入っていないものです。人は「薬を飲んだ」と思うだけで症状が改善することがあるため、比較のために使われます。
- 無作為化(ランダム化):どちらのグループに入るかを、くじ引きのような方法で決めることです。医師が選ぶと、無意識に偏りが生まれてしまうためです。
- 二重盲検(にじゅうもうけん):治験薬とプラセボのどちらを使っているかを、参加者にも医師にも分からないようにする方法です。思い込みによる評価のブレを防ぎます。
発売後に行う第4相(製造販売後臨床試験)
治験は第3相で終わりますが、薬の確認はそこで終わりません。
発売後、実際に多くの人が使い始めると、第3相までの人数では見つからなかった副作用が出てくることがあります。また、長期間使い続けた場合や、他の薬と一緒に使った場合の影響も、発売前には分かりません。これらを調べるために行われるのが製造販売後臨床試験(第4相)です。
治験を支える2つのルール|薬機法とGCP
治験は「人体実験」のように受け取られることがありますが、実際には法律と国の基準にもとづいて実施が義務づけられています。
- 薬機法(やっきほう):正式には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。薬全般について定めた法律で、治験もこの法律のなかに位置づけられています。
- GCP(ジーシーピー):正式には「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」。薬機法にもとづいて厚生労働省が定めた、治験の実施方法そのものを細かく決めたルールです。治験はGCPに従って行うことが義務づけられています。
参加する人を守る4つの原則
GCPが求めているのは、次の4点に集約されます。
- 参加者の人権、安全および福祉に対する配慮
- 自由意思によるインフォームド・コンセント(十分な説明を受けたうえでの同意)
- 治験審査委員会(IRB)による事前の審査・承認
- 参加者の損失に対する適切な補償

とくに重要なのは1点目です。治験では、科学の進歩や社会の利益よりも、参加する人の人権・安全・福祉が優先されます。これは順位の問題であって、努力目標ではありません。
治験審査委員会(IRB)とは
IRB(アイアールビー)は、その治験を実施してよいかどうかを事前に審査する第三者の組織です。医療の専門家だけでなく、医療とは関係のない立場の人や、その医療機関と利害関係のない人が加わることが求められています。
IRBが「科学的または倫理的に問題がある」と判断した計画は承認されず、その治験は実施できません。本人の意思を無視して行われる非倫理的な人体実験と、治験が決定的に異なるのはこの点です。
インフォームド・コンセントと途中辞退
参加の前には、治験の目的、使う薬、検査の内容、想定される副作用、他に選べる治療法などについて説明が行われます。納得できなければ参加しない選択ができますし、いったん同意したあとでも、参加中のどの段階でも辞退できます。
辞退したことを理由に、その後の治療で不利益を受けることはありません。
治験の制度やルールについては、厚生労働省「治験について(一般の方へ)」や、日本製薬工業協会「治験とは」でも解説されています。
治験に参加するのは誰か|健康な人と患者さん
治験に参加する人は、段階によって変わります。
第1相に参加する健康な人
第1相では、健康な成人が対象になります。インターネット上で「治験バイト」「治験アルバイト」と呼ばれているのは、主にこの段階の募集です。
ただし、これは法律上のアルバイトではありません。研究に協力する有償ボランティアという位置づけです。参加にともなう時間の拘束や交通費などの負担を補う目的で「負担軽減費」が支払われるため、アルバイトのように見えることがあります。
負担軽減費の考え方や金額の目安は、こちらで詳しく解説しています。
治験は、新しい薬や治療法の開発を支える重要なボランティア活動ですが、一般的なボランティアとは異なり、「報酬」が得られる点もその大きな魅力のひとつとなっています。 なお、治験で支払われるお金は「謝礼」や「謝礼金」と表現されることもありますが、この記事では「報酬」という言葉で統一して説明します。 ...
第2相・第3相に参加する患者さん
第2相以降は、その薬が対象とする病気を持つ患者さんが対象です。通院しながら参加する形が中心で、全国の医療機関で実施されます。
患者さんにとっては、まだ一般には使えない治療を受けられる機会になる場合があります。一方で、プラセボのグループに入る可能性や、通常より通院の回数が増えることもあります。
参加には健康診断(スクリーニング)がある
応募すれば誰でも参加できるわけではありません。治験ごとに年齢・性別・検査値などの条件が決められており、事前の健康診断で基準を満たした人だけが参加できます。
治験のリスクについて
ここまで安全を守る仕組みを説明してきましたが、リスクがゼロというわけではありません。治験薬はまだ承認されていない薬なので、ごく稀に予期しない副作用が起こる可能性があります。
そのために、参加前の説明、いつでも辞退できる仕組み、健康被害が生じた場合の補償が制度として用意されています。国内外の実例や補償の詳細は、こちらで整理しています。
「治験で死亡事故はあったの?」 「治験の副作用で後遺症が残ることはあるの?」 「治験の高額な報酬は危険度が高いから?」 治験に対して、このような印象や疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。 日本では年間数万人規模の方が治験に参加していますが、多くの参加者は問題なく試験を終えてい...
よくある質問
治験と臨床試験は同じものですか?
同じではありません。臨床試験は人を対象とする試験全体を指す広い言葉で、そのうち国の承認を得ることを目的としたものが治験です。健康食品や化粧品のモニター試験も臨床試験に含まれますが、治験ではありません。
ぺいるーとに掲載される「治験」「健康食品モニター」「化粧品モニター」は、法律上・制度上の位置づけが異なります。応募の前に「自分が参加する案件は、治験なのか、それ以外のモニターなのか」を整理しておくと、報酬の仕組みや参加のハードルを理解しやすくなります。 このページでは、参加者の視点から「治験」...
治験薬はどこまで安全が確かめられているのですか?
治験に入る前に、非臨床試験で動物や細胞を使った安全性の確認が済んでいます。そのうえで第1相では少量から段階的に量を増やし、常に医師や看護師が体調を確認しながら進めます。
プラセボは必ず使われるのですか?
必ずではありません。すでに標準的な薬がある病気では、プラセボではなくその薬と比較することが一般的です。プラセボが使われるのは、比較できる薬がない場合などです。
治験はどのくらいの期間かかりますか?
ひとつの薬について、第1相から第3相まで合わせて3年から7年ほどかかるのが一般的です。ただし参加者ひとりが関わる期間はその一部で、数日で終わるものから数か月にわたるものまで、治験ごとに大きく異なります。
治験が終わったあとも、その薬を使い続けられますか?
原則として、治験の期間が終われば治験薬の使用も終了します。治験によっては、終了後も継続して使用できる仕組みが用意されている場合がありますが、内容は治験ごとに異なるため、同意説明の際に確認してください。
まとめ
治験とは、新しい薬が国の承認を受けるために、人で効き目と安全性を確かめる試験です。第1相から第3相まで段階的に進められ、薬機法とGCPというルールのもと、IRBの審査を経て実施されます。
今、私たちが病院や薬局で受け取っている薬は、すべてこの過程を通ってきたものです。治験に参加する人がいなければ、新しい薬は世に出ません。
ぺいるーとでは、全国の治験・モニターの募集情報を掲載しています。参加条件に合うものがあるか、無料会員登録のうえご確認ください。








