治験は正確には【有償ボランティア】に分類されますが、副業感覚で参加し、報酬を受け取る方も少なくありません。
この記事では、治験の報酬がどの程度の収入になるのか、具体的なケースを交えて解説します。
目次
治験は副業? いえ「有償ボランティア」です
治験は有償ボランティアであり、副業には該当しません。
受け取るお金は「報酬」として扱われ、会社員やアルバイトが得る「給与」とは区別されます。
そのため、就業規則で副業を禁止している場合でも、治験への参加は違反にはならないと考えられます。
公務員が参加する場合も基本的に問題はありません(詳しくは後述します)。
ただし、時間や労力を提供して報酬を受け取る点では副業と似ているため、この記事では分かりやすく「副業」という言葉を用いて解説します。
治験の報酬相場や具体例については、以下の記事もあわせてご覧ください。

治験は、新しい薬や治療法の開発を支える重要なボランティア活動ですが、一般的なボランティアとは異なり、「報酬」が得られる点もその大きな魅力のひとつとなっています。 治験の報酬は、正式には「負担軽減費」と呼ばれ、参加者が負担する時間的・経済的負担を軽減する目的で支払われます。これは、労働の対価とし...
「副業収入を勤務先に知られたくない」場合はどうする?
治験はアルバイトなどの副業とは異なる「有償ボランティア」ですが、それでも「副業収入が会社に知られたくない」という場合には、確定申告や住民税の納付方法を適切にコントロールすることで、発覚のリスクを抑えることができます。
主な方法は以下の2つです:
- 1月~12月の雑所得を200,000円以内に収める
- 住民税を「自分で納付(普通徴収)」する
それぞれ順番に詳しく解説していきます。
1月~12月の雑所得を200,000円以内に収める
本業の給与以外の所得(雑所得)が200,000円以内であれば、確定申告が不要となり、勤務先に知られるリスクを大きく減らせます。
なぜなら、自ら確定申告を行うと住民税の徴収方法が「給与からの天引き(特別徴収)」になり、自治体から勤務先へ税額が通知されることで副業が発覚するケースがあるからです。
そのため、雑所得を200,000円以内に収めて確定申告を避けることで、こうした通知を防ぐことができます。
ただし、雑所得が200,000円以下の場合でも、住民税の申告は必要です。
また、治験の「雑所得」は、報酬から経費(治験会場までの交通費など)を差し引いた金額であることに注意してください。
住民税を「自分で納付(普通徴収)」する
雑所得が200,000円を超えた場合は確定申告が必要です。
その際、住民税の納付方法を「自分で納付(普通徴収)」に指定することで、勤務先への通知を防ぐことが可能です。
「給与から天引き(特別徴収)」を選んでしまうと、税額の通知が勤務先に届いてしまうため注意が必要です。
注意点
雑所得が200,000円以内でも、以下の場合は確定申告が必要です:
- 2ヶ所以上から給与を受け取っている場合
- 給与合計が2,000万円を超える場合
確定申告をしなくてもバレない?
治験の報酬は手渡しで支払われることもありますが、「手渡しだから確定申告をしなくても大丈夫」というのは誤解です。
治験実施機関は、支払った報酬を費用として申告しているため、税務署に記録が残ります。
確定申告を怠った場合、後から指摘される恐れがあります。
年間200,000円を超える報酬を受け取るケースは少ないかもしれませんが、この点には十分注意しましょう。

治験に参加すると「負担軽減費」として謝礼金を受け取ることができますが、パート・アルバイト代とは異なり、社会保険料や所得税などの税金が天引きされることはなく満額を受け取ることができます。しかし、この謝礼金に税金がかかることはご存じですか?治されず満額受け取ることが可能となります。 ただし、必ず確...
公務員でも治験には参加できる?
国家公務員・地方公務員は、許可なく営利企業に従事したり、自ら事業を営んだりすることが法律で禁止されています。
関連法規:
- 国家公務員法第103条
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。- 地方公務員法第38条
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
これにより、公務員は原則として「給与」が発生する副業はできません。
治験の報酬は「負担軽減費」として扱われる
治験で得られる報酬は、ボランティア参加に対する「負担軽減費」や「治験協力費」に該当します。
つまり、営利目的ではないと判断され、公務員法における「副業禁止規定」には抵触しないと考えられます。
ただし、国家公務員法や地方公務員法には、職務専念義務と呼ばれる「勤務時間・職務上の全注意力は職責遂行に充てなければならない」という主旨の規定があります。そのため、治験が職務に影響する場合には、規定違反と判断される可能性がある点に注意してください。
就業規則や公務員法にかかわらず注意すべき点
治験は有償ボランティアであり、副業には該当しないと考えられます。
しかし、報酬を得ていることを周囲に公表するのは避けたほうが良いでしょう。
たとえば、治験への参加を聞いた第三者が、自身の状況と比較して不満を抱いた場合、事実とは異なる情報を上層部に伝えるリスクも考えられます。
過去には、公務員が許可なく不動産賃貸業で収入を得ていたことで通報され、懲戒処分となった事例もあります。
このケースは事情が異なるものの、周囲の誤解や嫉妬心が思わぬトラブルにつながる可能性があることを示しています。
治験の報酬を得る行為は違法ではありませんが、不必要に公表せず、リスクを避ける意識も大切です。
入院の治験に参加した場合、副業収入はどれくらい?
入院の治験を副業収入として考える場合、現実的な例として「2泊3日×2回(合計4泊6日)」の治験を例にシミュレーションしてみます。
この場合、1度の報酬総額は約10万~12万円です。
さらに、休薬期間(3〜4ヶ月)を考慮すると、同条件の治験に参加できる回数は年2~3回が上限となり、年間の報酬総額は20万~36万円ほどになります。
ただし、この収入は治験の事前検診(合格率約40%)に毎回合格し、休薬期間が明けたころにタイミングよくスケジュールに合った治験に参加できたケースを例にしていますので、実際の報酬総額はもっと少額になると考えられます。
入院の治験に参加する際の合格率を高めるコツや、スケジュールの詳細については、以下の記事をご参考ください。

入院の治験に参加する際、事前の健康診断に合格するためのコツや合格率は、誰もが気になるところです。 この記事では、健康診断に合格するためのポイントや、治験参加までの流れ、入院中のスケジュールについて詳しく解説します。初心者の方でもわかりやすいよう、入院の治験の全体像を余すことなく網羅しました。 ...
通院の治験に参加した場合、副業収入はどれくらい?
通院の治験は、女性や持病のある方が対象となるケースが多く、1回の通院ごとに約10,000円の報酬が支払われることが一般的です。
ただし、通院期間はさまざまで、3ヶ月程度の短期間から5年以上の長期間に及ぶ場合もあります。そのため、1年間でどれほど参加できるかは試験期間や休薬期間によって様々です。
目安として、治験の場合の通院頻度は2週間~1ヶ月に1回が多く、このペースで参加すると、月の収入は約10,000~20,000円程度になります。つまり、年間の報酬総額は100,000円〜150,000円程度になると考えられます。
さらに、通院タイプのモニターには「化粧品」や「健康食品」のモニターもあり、日帰りで参加できるものが多いため、「入院する時間が取れない」という方にもおすすめです。
日帰り治験やモニターに関する詳細は、以下の記事でご紹介しています。

治験や臨床試験には、日帰りで参加できるものもあります。 通院タイプの治験 化粧品のモニター 健康食品のモニター 上記は日帰りであるため、スケジュールの都合により入院治験の参加が難しい場合でも、気軽にご参加いただけます。 また「女性が参加できるおすすめの治験とは?入院...
入院・通院の治験はそれぞれどんな人の副業に向いている?
副業感覚で参加する方も多い治験ですが、入院の治験と通院の治験では向いている人が異なります。
それぞれの特徴をまとめました。
治験の種類 | 向いている人 |
入院の治験 | 平日にまとまった時間を確保できる健康な人 |
通院の治験 | 持病があり、定期的な通院が負担にならない人 |
入院の治験
- 平日に行われることが多いため、参加には有給休暇や休日と日程が合う募集を狙う必要があります。
- そのため、フリーターや自営業者(フリーランス)、大学生など、比較的時間の融通が利く人に向いています。
通院の治験
- 生活習慣病やアレルギー疾患、精神疾患などの持病がある方が対象です。
- 日程が柔軟な場合が多く、もともと通院している方は、報酬を得ながら治療を進められるメリットがあります。
それぞれの治験に参加した方の体験談もぜひ参考にしてみてください。

「治験の報酬は魅力的だけど、実際に参加した人はどう感じたんだろう?」 このような不安を抱える方は少なくありません。治験について詳しく知らないと、「後遺症や副作用のリスクがあるこそ、高額な報酬が設定されているのでは?」と考えがちです。 さらに、ネット上には不安を煽る記事や動画も多く見られるため、余...