男性を対象とした治験と比べて、女性が参加できる治験は少なめです。しかし「入院タイプの治験」に絞らなければ、女性が参加できる治験モニターも数多くあります。
ここでは、以下について順番にご説明します。
- 女性が参加できる3つの治験モニター
- 参加時に注意すべき4つのポイント
- 女性が参加できる入院治験が少ない理由
- モニター参加前に気になる疑問点
「今、どのようなモニター募集があるのか」が気になる場合には、こちらのボタンから最新のモニター募集情報をご覧いただけます。
女性が参加できるおすすめの治験モニターは3つ
女性が参加できる治験モニターは、以下の3つです。
- 通院タイプの治験(持病がある方向けの治験)
- 化粧品モニター(美容に関心のある方向けの臨床試験)
- 健康食品モニター(健康に関心のある方向けの臨床試験)
ここで「治験と臨床試験はどう違うの?」と疑問が浮かぶところですが、簡単に言えば以下の通りです。
- 臨床試験は、何らかの有効性・安全性を確認する試験
- 治験は、臨床試験のうち医薬品・医療機器を用いるもの
より詳しい解説は「治験と臨床試験の違いを解説した記事」をご覧ください。
それでは、女性が参加できるおすすめの治験モニターについて、それぞれの特徴や具体例を解説します。
通院タイプの治験モニター
男性を対象とする募集が多い入院タイプの治験とは異なり、持病を持った方を対象とする通院タイプの治験は、その多くが男女関係なく参加できます。
また、エストロゲン(卵巣ホルモン)の減少により女性に起こりやすい更年期障害や、女性特有の疾患である子宮内膜症や月経過多を対象としたモニター案件もあります。
女性が参加可能な通院タイプの治験に、どのようなケースがあるのか過去に募集された案件の概要をまとめました。
主な対象者 | 治験の概要や主な参加条件 |
便秘でお悩みの方 | 治験薬を投与し、約2ヶ月間に5回ほど通院する治験。排便回数が少ない、排便日誌を記録できるなどの条件を満たせば参加可能。 |
2型糖尿病を治療中の方 | 治験薬を使用し、約41週間に20回通院する治験。BMI値25~40未満、診断から半年経過しているなどの条件を満たせば参加可能。 |
うつ症状がある方 | 治療薬を使用し、6ヶ月服薬しつつ15回通院する治験。うつ診断を受けたことがなくても、気になる症状があれば参加可能。 |
顔に赤いニキビがある方 | ニキビ肌用の化粧水と美容液を8週間使用し、実施会場へ3回来訪する治験。保護者同伴であれば未成年者も参加可能。 |
受け取れる謝礼金は、1回の通院ごとに7,000~10,000円です。気になっていたものの受診の機会がなかった症状や長年放置していた持病を、謝礼を受け取りつつ治療するきっかけとしてご活用いただけます。
ケア用品などを用いた化粧品モニター
化粧品モニターは、化粧品などを試用しながら謝礼金を受け取れるため、美容感度の高い女性には嬉しい取り組みです。
ここでは「シワクリーム」のモニターを例に、事前説明から謝礼金を受け取るまでの流れをご紹介します。
化粧品モニターは、主に以下を目的として募集されます。
- 商品の販促時に用いる効果のエビデンス(証拠)を集めるため
- 当局へ申請する前に、化粧品の効果や安全性を示すため
たとえば、近年「シワを改善する」とアピールするアイクリームが増えたと思いませんか?
実は、平成23年7月に「乾燥による小ジワを目立たなくする」という効能表現を、化粧品に表示して広告できることになりました。ただし、効能を表示するためには臨床試験を行い、効果を検証・確認しなければなりません。
先ほど紹介したような流れを経て、モニターに協力してもらう必要があるのです。謝礼金をもらいつつ化粧品を無料で試せる背景には、このような理由があります。
どのような内容の化粧品モニターがあるのか、過去に募集された案件の概要をまとめました。ぜひ、一例として参考にしてください。
主な対象者 | モニターの概要や主な参加条件 |
ほうれい線が気になる方 | 乳液もしくはクリームの試験品を12週間使用し、実施会場に来訪するモニター。美容液等を使用しておらず、常用薬のない方が参加可能。 |
アトピー性皮膚炎等の方 | 自宅でシャンプーを使用し、実施施設に通院するモニター。週4回以上の洗髪ができる、アトピー性皮膚炎または乾燥肌の方が参加可能。 |
目尻のシワが気になる方 | ローションまたはクリームを4週間使用し、実施施設に来訪するモニター。目尻に浅いシワがあり、1ヶ月以内に基礎化粧品や日焼け止めを変更していないなど、いくつかの条件を満たした方が参加可能。 |
受け取れる謝礼金はモニター内容によりさまざまですが、上記の例では事前検診から本試験までの参加で10,000~30,000円の謝礼金が設けられました。
通院のたびに謝礼金を受け取れる治験と比べて、総額はやや少ない印象があるものの、美容に気を遣いながら謝礼金を受け取れるところに魅力があります。
健康食品モニター
謝礼金が高額な傾向であり、かつ販売前の最新商品を無料で試せることから、健康食品モニターは化粧品モニターと並んで人気があります。あっという間に募集が締め切られるケースも珍しくありません。
突然ですが、こちらのマークが付いた商品を見たことはありませんか?
「お腹の脂肪を減らすのを助ける機能があることが報告されています」など、健康面に効果があると書かれた商品は、効果効能を表示するために一定期間使用し、専門医師によって有効性や安全性を確かめる「評価試験」を実施する必要があります。
健康食品モニターは、その試験に参加して効果効能を検証するための一員となる取り組みです。ここでは「内臓脂肪を減らすサプリメント」のモニターを例にして、事前説明から謝礼金を受け取るまでの流れを紹介します。
健康食品モニターは、化粧品のモニターよりも募集人数が多い傾向にあり、比較的参加しやすいと言えます。どのような内容の健康食品モニターがあるのか、過去に募集された案件の概要をまとめました。ぜひ、一例として参考にしてください。
対象者 | モニターの概要や主な参加条件 |
非喫煙者 | 肌の透明感を向上するサプリメントを3ヶ月間使用し、実施施設に来訪するモニター。非喫煙者、睡眠に不満がある方などが参加可能。 |
コレステロールが気になる方 | お茶を12週間摂取し、実施施設に来院するモニター。20~64歳、夜間勤務をしていないなど、いくつかの条件を満たした方が参加可能。 |
軽い胃の不快感がある方 | ヨーグルトを12週間摂取し、実施施設に来院するモニター。ピロリ菌除菌治療を受けていないなど、いくつかの条件を満たした方が参加可能。 |
パソコン作業が多い方 | 目のピント調節機能改善が期待されるサプリメントを4週間使用し、実施施設に来訪するモニター。近視・遠視・乱視以外に眼の病気がないなどの条件を満たした方が参加可能。 |
受け取れる謝礼金はモニター内容によりさまざまですが、上記の例では事前検診から本試験までの参加で30,000~80,000円の謝礼金が設けられました。
化粧品と同じように、健康に気を遣いながら謝礼金を受け取れるところが、健康食品モニターの魅力です。
治験・臨床試験のモニター参加時に注意すべき4つのポイント
治験や臨床試験は、薬や試験品の効果効能を調べるための取り組みであり、試験の正確性や安全性を落とさないための決まりごとが設けられています。
詳細な注意点は参加前に説明されますが、大半の試験に共通する注意ポイントを覚えておいた方が説明をスムーズに理解できるはずです。ここからご紹介する4つのポイントは、特に重要であるためぜひ覚えておいてください。
治験期間中は必ず避妊し、万一妊娠した際には即報告
治験薬が母体や胎児(赤ちゃん)に影響を及ぼす可能性を避けるため、すでに妊娠している女性は治験に参加できません。そして、治験期間中は避妊にご協力いただきます。
長期間にわたる治験では、避妊をしていても参加途中に妊娠する可能性が考えられます。もしも妊娠が発覚した場合、母体と胎児への影響を考慮して治験を即中止しなければなりません。
このようなケースでは「妊娠期間中に治験を受けてしまった」ということになるため、無事に出産を終えるまで経過観察や追跡調査が必要です。原則として、治験期間中には避妊を徹底し、それでも子どもを授かった場合にはすぐに報告してください。
薬やサプリメントの服用制限を遵守
参加した治験や臨床試験の内容によっては、薬やサプリメントの服用制限が設けられます。効果や副作用が生じたとき、それが「治験薬や試験品の影響」なのか「常用している薬やサプリメントの影響」なのかを、正確に把握するためです。
常備薬を手放せない場合には、その薬が参加基準で使用を禁じられていないか確認し、あらかじめ申告したうえで参加しましょう。
「参加できないケース」の条件も要確認
治験や臨床試験は、試験によって「日本国籍をお持ちの日本人」や「〇〇市にお住まいの方」など、いくつかの参加条件が設けられています。この際「参加するための条件」だけでなく「参加できないケース」も記載されているため、両方を確認のうえ参加をご検討ください。
たとえば、特定の病気を患った経験のある方が参加できない治験もありますし、顔に美容医療(ボトックス注射など)を施した方が参加できない化粧品モニターもあります。
ほかにも夜間勤務をしている方や、特定のアレルギーがある方が参加できないケースもあるため、参加するための条件とあわせて確認しておきましょう。
休薬期間に治験や臨床試験へ参加してはならない
多くの謝礼金を受け取るために、短期間のうちに治験や臨床試験を連続して受けることはできません。
治験は通常4ヶ月ほどの休薬期間(薬を服用しない期間)が設けられ、化粧品や健康食品などの臨床試験は「1ヶ月ほど治験参加歴がない」といった参加条件が設けられる場合もあります。
このように一定期間を空ける理由は、治験や臨床試験における検証の正確性や安全性を確保するためです。
モニター参加は、以上のようなポイントや事前に受ける注意事項に気を付けつつご検討ください。
なぜ女性が参加できる入院タイプの治験は少ないの?
女性を対象とした入院タイプの治験が少ない理由は、3つ挙げられます。
- ホルモンバランスの影響
- 妊娠時のリスク予防
- 厚生労働省の指針
女性と男性では身体の機能に違いがあるため、上記の観点から入院タイプの治験は「原則として健康成人男性」と決められているのです。それぞれ、詳しくご説明します。
理由①:ホルモンバランスの影響
女性の身体には、おおむね28日を1サイクルとする「生理周期」があります。生理周期に合わせて女性はホルモンバランスが変わり、それにともない治験薬の効果にも影響が出てしまうのです。
入院タイプのように続けて長時間検査する治験では、より正確な治験薬のデータを収集するために、生理周期のない男性を被験者とするケースが一般的なのです。
理由②:妊娠時のリスク予防
治験薬は動物を対象とした非臨床試験を通過した薬ではありますが、開発段階の薬が胎児(お腹にいる赤ちゃん)へどう影響するのか情報が少ない状態です。
このような前提を考慮し、治験薬の服用により妊娠時に問題が起こらないよう、基本的には男性が被験者に選ばれます。なお、治験のルールでは、男女問わず治験参加中の避妊が義務付けられています。
理由③:厚生労働省の指針
厚生労働省が公表する「新医薬品の臨床評価に関する一般指針について」では、以下のように「第Ⅰ相試験(主に入院タイプの治験)は健康成人男性を被験者にする」といった旨の記述があります。
“第Ⅰ相試験は、治験薬を初めてヒトに適用する試験で、原則として少数の健康男性志願者において、治験薬について臨床安全用量の範囲ないし最大安全量を推定することを目的と し、あわせて吸収・排泄 などの薬物動態学的検討を行ない、第Ⅱ相試験に進み得るか否か の判断資料を得るための試験である。”
引用:厚生労働省「新医薬品の臨床評価に関する一般指針について」
そもそも国の指針が治験の被験者を男性と指定していることも、女性を対象とした入院タイプの治験が少ない理由の1つです。
治験や臨床試験に関するよくある疑問点
最後に、治験や臨床試験に関して、よくいただく質問をまとめて紹介します。
モニター募集が多い地域はどこ?
モニター募集は全国各地で行われていますが、実施場所は東京・大阪・福岡・札幌などの都市部に集中しがちです。モニター募集は「実施地域」を指定して検索できるため、ぜひお住まいの近くでモニター募集が行われていないか、こまめに確認してみてください。
化粧品や健康食品を押し売りされない?
モニター募集は全国各地で行われていますが、実施場所は東京・大阪・福岡・札幌などの都市部に集中しがちです。モニター募集は「実施地域」を指定して検索できるため、ぜひお住まいの近くでモニター募集が行われていないか、こまめに確認してみてください。
販売前の化粧品を使い、肌が荒れることはない?
残念ながら、絶対に肌荒れが起こらないとは言えません。というのも、市販の化粧品と同様、誰の肌にも合う化粧品は存在しないからです。
モニター期間中にお肌へ異常・異変を感じた場合には、ご相談のうえ中止できます。
本当に期待通りの効果を得られるの?
多くの試験に共通することですが、そもそも試験は期待通りの効果があるか確認することが目的であるため、必ずしも効果が保証されるわけではありません。
また化粧品モニターの場合には、お顔の片側にしか試験品を使えないケースや、片側に「有効成分のあるもの」を付けてもう一方に「有効成分の含まれていないもの」を付け、比較するようなケースもあります。
ジェネリック医薬品(すでに流通している医薬品と同成分の薬)の治験など、あらかじめ高確率で特定の効果があらわれると予測できるモニターもありますが、基本的には「絶対に効果があるとは言えない」と考えておいてください。
家族や友人と一緒に参加できる?
ご家族、ご友人との参加も可能ですが、事前検診の結果により相手が不適格となり、ご自身のみが参加するケース(またはその逆のケース)になる可能性もあります。あらかじめ、ご了承ください。
以上の点にご留意いただき、ぜひ希望や参加条件に合うモニター募集を探してみてください。
また、こちらから治験や臨床試験に参加した方の体験談をお読みいただけます。女性の体験談も掲載されていますので、化粧品や健康食品を使ったモニターがどのような内容なのか気になる場合は、ぜひご覧ください。