お金・報酬

治験報酬の相場と実例 – 支払時期や税金についても徹底解説

治験の報酬は正式には「治験協力費」「負担軽減費」と呼ばれますが、一般的には「報酬」「謝礼金」として知られています。そのため、この記事では「報酬」という用語で統一してご説明します。

治験と報酬に関する基礎知識を1ページに凝縮しましたので、治験に参加する前にぜひご一読ください。

治験の報酬相場と実例

治験の報酬は、入院の治験の場合、1泊あたり15,000~30,000円。通院の治験の場合、通院1回につき10,000円が相場です。なお、まれに通院の治験の場合で、通院先の医療機関が大学病院などのケースでは、通院1回につき7,000円の報酬になることがあります。

また、治験参加前の事前健診では、入院の治験の場合、3,000円前後が支払われます。一方、通院の治験では、初診料や再診料といった自己負担が発生することが多いため、一般的にはその金額が3,000円に上乗せされる形で支払われます。

入院の治験の報酬例

入院の治験の報酬例を、短期から長期までの3つのケースに分けてご紹介します。

内容 対象 期間 報酬
健康成人の治験 ・20〜40歳
・健康な男性
2泊3日を2回 10万円
健康成人の治験 ・20〜40歳
・健康な男性
12泊13日 35万円
健康成人の治験 ・20〜44歳
・健康な男性
22泊+13回通院 65万円

通院の治験の報酬例

次に、通院の治験の報酬例として2つのケースをご紹介します。

内容 対象 期間 金額
ワクチンの治験 ・20歳以上
・男女
8週間に4回通院 4万円
糖尿病の治験 ・20歳以上
・男女
1年1ヶ月に24回通院 24万円

治験の報酬にかかる税金

治験の報酬は、その年の収入状況等によって税金がかかることがあります。

治験の報酬は所得税と住民税の対象になる

治験の報酬は、所得税と住民税の課税対象です。

所得税の申告手続きは、翌年2月16日から3月15日の期間に行う必要があり、納付も3月15日が期限です。

報酬を受け取った年に、給与などの所得がある人は、年間で得た所得をトータルして所得税を計算しなければなりません。

住民税の申告期限も所得税と同じ翌年3月15日までですが、所得税の申告書をしている方は、住民税の申告を省略することができます。

納付については、市区町村から送られてくる納付書で納める方法と、勤務先で税金が天引きされる方法の2つありますので、いずれかの方法で納めてください。

治験の報酬以外の収入がない場合

令和2年(2020年)の所得税の確定申告から基礎控除額が一律38万円から所得2400万円以内の場合は48万円に増額されました。その基礎控除額があるため、所得金額が48万円以下であれば所得税は発生しません。

治験の報酬は雑所得に分類され、報酬から経費を差し引いた金額が所得金額となります。

治験の報酬を受けた年に報酬以外の収入がない場合、報酬の所得金額が48万円以下であれば所得税はかかりませんし、確定申告も不要です。

また所得税には基礎控除額以外の控除もありますので、48万円を超える所得が発生したとしても、税金がかからないケースもあります。

会社員やパート・アルバイトが副業として治験の報酬を受け取った場合

会社員やパート・アルバイトが報酬を受け取った場合、原則として確定申告が必要です。

ただ勤務先で年末調整が完了していれば、「申告不要制度」を適用できる可能性があります。

申告不要制度は、年末調整済の給与所得と、それ以外の所得が20万円以下の場合に適用できる制度で、要件を満たせば所得税の申告が不要となります。

(仕事を掛け持ちしている場合などは適用対象外です。)

なお、住民税には申告不要制度が存在しませんので、所得税の申告手続きが不要になったとしても、住民税の申告手続きは必要です。

治験の報酬に対する税金関係の詳細は、下記をご覧ください。

治験の報酬は”いつ”支払われるの?

「謝礼はいつもらえますか?」

治験の報酬に関して、このような質問をいただくことが多いため、一般的な支払い方法と支払い時期を解説します。

  • 入院の治験の場合、基本的に最終退院日に現金を手渡しで支払われます。しかし、長期の入院の場合や、入院が複数回に分かれる場合には分割して支払われるケースもあります。
  • 通院の治験の場合、通院のたびに現金を手渡し、もしくは、翌月末に通院回数分をまとめて銀行振込のいずれかで支払われます。

治験を実施する会社や医療機関によって多少の違いはあるものの、上記が基本的な形態です。気になる方は参加前にご確認ください。

初回の健康診断の報酬は来院当日に支払われる

初回の健康診断の際に支払われる3,000円ほどの交通費は、入院・通院タイプのどちらであっても基本的に来院当日に現金で支払われます。

報酬の受け取りは募集会社ではなく治験コーディネーターから

治験に参加した際の報酬を、弊社のような募集会社から直接受け取るケースはまれです。通常は実施医療機関、または治験施設支援機関(SMO)の治験コーディネーター(CRC)から、治験参加者の皆さまへ報酬が支払われます。

治験の報酬が高額な理由

入院の治験は高額であることから、いつしか「治験=高額報酬=危険」というイメージが定着しました。

これは完全な誤解です。報酬が高額になる理由としては、拘束時間の長さが関係しています。

一般的な時給に24時間(治験の拘束時間)をかけ算すると、報酬が妥当なものであると分かります。

1,000円×24時間=24,000円

また、入院の治験に参加すると外出が制限されたり、飲食や喫煙などの制限も加わります。これらを考慮すると、寝ている時間も拘束時間となる治験は、決して理解できないほど高額な報酬額ではないとお分かりいただけるはずです。

治験の報酬が高い理由

「危険だから報酬が高額」ではないもののリスクはある

治験に限らず、お薬全般に言えることですが、副作用などのリスクが100%ないとは言い切れません。

2019年7月、健康な成人男性を対象とした治験において、国内初の死者が出ました。参加者の飛び降りが死因であり、他の被験者に重篤な有害事象はなかったものの、このとき厚生労働省は「治験と死亡事故との因果関係を否定できない」と評価したのです。

その事故の詳細や治験の危険性、副作用についての正しい知識については、こちらの記事で詳しく解説しています。

入院の治験参加者は拘束時間をどう過ごしている?

入院の治験参加者は、参加期間中ずっと拘束されることになるため、多くの方は施設にある漫画やテレビ、持参したパソコンやゲーム機などを使って過ごしています。

入院中は外出や面会ができないものの、投薬や採血などの検査にかかる時間以外は自由です。そのため、拘束時間や採血回数にそれほど負担を感じない参加者のなかには、参加する労力よりもメリットが大きいと感じる方もいます。

入院中のスケジュール感や合格率アップのコツは以下の記事をご覧ください。

本来「治験バイト」とは呼ばない?!治験とアルバイトの違い

実は「治験バイトで高額収入!〇〇万円」など、金銭誘引に該当する募集行為は禁止されています。過度に期待を煽って冷静さを失わせることは、治験の大原則である「本人の自由意志」を損ねる行為にあたるからです。

そのため、本来なら金銭を連想させる「バイト」や「アルバイト」というワードを治験と紐づけて「治験バイト」などと呼ぶべきではありません。これを理解して運営されている治験の募集サイトでは、高収入であることを前面に出して広告や体験談を掲載することはないのです。

日本製薬工業協会が公表する要領にも、以下のような記述があります。

被験者負担軽減は、種々の負担が軽減する内容、負担が軽減される金額の記載は可能である。ただし、金銭の支払いによって誘引するような表現は認められない。

引用:日本製薬工業協会 医薬品評価委員会「治験に係わる被験者募集のための情報提供要領<改訂版>」

治験は正式には有償ボランティア(治験ボランティア・創薬ボランティア)と呼ばれます。また、治験により支払われる報酬は、負担軽減費や治験協力費と呼ばれ、治験に参加される方の負担を軽減する目的で支払われます。

バイトやアルバイトなどで労働の対価として受け取る給与は、雇用契約に基づき雇用主から従業員へ支払われる報酬を指しますが、治験の負担軽減費はあくまでも本人の自由意志に基づき、ボランティアとして治験へ参加する際の負担を軽減するために支払われる報酬を意味します。

しかし、残念ながら現実には報酬額の大きさをアピールするサイトや広告が溢れているものの、その誤解がトラブルを招く可能性はゼロではないため、治験に関する知識の1つとして覚えておいていただければと思います。

治験参加にかかる費用

治験費用図

「治験では報酬をもらえる代わりに参加にお金がかかるのでは」と考えてしまうものですが、入院・通院ともに特別な参加費を負担することはありません。

  • 入院の場合、かかる費用は医療機関までの交通費のみ
  • 通院の場合、かかる費用は交通費+初診料・再診料

上記の通り入院タイプの治験の場合は交通費のみ、通院タイプの治験の場合は交通費と初診料・再診料がかかるものの、治験の参加報酬を受け取れるため完全な自己負担にはなりません。

さらに、すでに持病により通院していて、普段から診察料・薬代などを負担しているケースであれば、その金額の一部(または全部)を治験によって賄える可能性があります。この場合には、特に治験へ参加するメリットが大きいと言えるでしょう。

治験参加で重要な2つの注意点

①治験の休薬期間は4ヶ月

治験の報酬を多く獲得しようとして、短期間のうちに連続して治験へ参加してはいけません。

検証の正確性や安全性を確保するため、治験前には薬を服用しない「休薬期間」を設ける必要があるからです。定められる休薬期間はさまざまですが、3~6ヶ月程度の範囲に収まるものが大半です。

その中でも、通常、休薬期間は4ヶ月と設定されるのが一般的です。

②複数の治験へ同時に参加できない

治験を同時に複数参加することは禁止されています。主な理由としては、以下が挙げられます。

  • 薬の安全性・有効性を正確に判定できないため
  • 薬の飲み合わせが悪く、健康被害が生じるリスクがあるため

必ず、参加中の治験が終了し、休薬期間を終えてから次回の治験へ参加してください。

不安がある場合は「参加者の体験談」からチェック

治験は拘束時間が長く、報酬が高額である点は魅力的です。しかし、実用化前の薬に怪しさを感じたり、施設内での過ごし方がイメージできなかったり、いろいろな不安が付きまとうものです。

そこで、実際に治験や臨床試験のモニターとして参加した方から、どのような感想を抱いたのか意見をいただきました。こちらに参加者から届いたリアルな体験談をまとめています。

ぜひ、治験や臨床試験の実状をお確かめください。

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