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抗がん剤の治験とは〜抗がん剤の移り変わりと治験について〜

【疾患コラム】

 抗がん剤の治験について

 

[目次]
抗がん剤の治験とは〜抗がん剤の移り変わりと治験について〜
-抗がん剤と、抗がん剤の治験の歴史
-抗がん剤と、抗がん剤の治験のトピックス
-抗がん剤の治験に特有なこと
まとめ

 

□抗がん剤の治験とは〜抗がん剤の移り変わりと治験について□
 

皆さんは、抗がん剤とその他の薬剤における治験の違いについてご存知でしょうか。

 

抗がん剤はその他の薬剤と比べて副作用が強く、健康な成人、いわゆる健常人を対象とした治験を実施しないことが大きな違いです。

 

ここでは、抗がん剤の治験の歴史から、特徴や最新の話題について触れた上で、抗がん剤の治験について述べていきます。

 

抗がん剤と、抗がん剤の治験の歴史
 

抗がん剤の治験の歴史を紐解くと、1950年代から始まっていたことが知られています。

 

その頃では、多くの抗がん剤ががん細胞だけではなく正常細胞にまで影響してしまう、細胞障害性抗がん剤と呼ばれる薬剤が主流でした。

 

これらの薬剤は、正常細胞も障害を受けてしまうため、副作用がとても強く出てしまうことが問題点として挙げられていたものの、他の治療法が適応されない場合では使わざるを得ませんでした。

 

例えば、抗がん剤の治療と言えば髪の毛が抜けたり、吐き気が出たりすることは、ドラマや映画、身近な人での経験などで良く知られているかと思いますが、これは正常細胞も障害を受けているためであることが知られています。

 

そこで、2000年代頃からは分子標的薬と呼ばれる、特定の細胞内外の分子を標的とする抗がん剤の研究開発と治験が盛んになってきました。

 

これらの薬剤は、なるべくがん細胞のみを攻撃できるように、がん細胞において比較的多く存在している分子をターゲットとすることで、正常細胞への影響を少なくさせるように設計されています。

 

しかしながら、がん細胞を主に攻撃するだけで正常細胞に影響が無いわけではなく、分子標的薬特有の副作用が認められています。

 

また、例えばAさんが○○がんでXという薬が効いたからといって、BさんでもXの効果があるかというと、そう上手くはいかないこともあることが現在では分かっています。

 

抗がん剤と、抗がん剤の治験のトピックス
 

2010年代以降では、がん免疫に着目した免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる抗がん剤や、活性化させた免疫細胞を体内に入れる治療法など、新規メカニズムを利用した薬剤の治験が盛んになってきています。

 

前者では、発見者がノーベル賞も受賞したオプジーボと呼ばれる有名なお薬が知られており、後者ではキムリアと呼ばれるお薬が2019年3月に日本国内で承認されたり、核酸医薬と呼ばれる薬剤の治験が進められたりしています。

 

しかしながら、これらの薬剤も分子標的薬と同様に、画期的なメカニズムであり効果も良好ではあるものの、まだまだがん細胞特異的とは言えず、正常細胞まで攻撃してしまったり、効く人と効かない人がいらっしゃるため、まだまだ改善が必要とされています。

 

そこで、これらの新しい薬剤の治験だけでなく、個別化医療やオーダーメイド医療と呼ばれる治療法のための治験が進められています。

 

前述してきた通り、どれだけ効果が証明されてきている抗がん剤でも、現状では効かない人がある程度の割合でいらっしゃいます。

 

そのため、○○がんに効く抗がん剤ではなく、Aさんに効く抗がん剤が選ばれる、すなわち個別化された抗がん剤の治験が進められています。

 

さらに、がんゲノム医療と呼ばれるがん細胞のゲノム、すなわちがん細胞内に存在するDNAと呼ばれる核酸分子に着目した治療であったり、抗がん剤のみの化学療法に頼らずに済むように、外科手術や放射線療法によってがんを除去するための早期発見技術の治験も推進されたりしています。

 

このようにして、抗がん剤とがん治療は進化を遂げてきています。

 

抗がん剤は細胞を丸ごと標的としてきた時代から、細胞内外の特定の分子、特にタンパク質を標的とするものが登場し、その後はがん細胞だけでなく免疫細胞を標的とする薬剤が開発されてきています。

 

さらには、がん細胞特有のDNAを標的とする薬剤の開発も盛んになってきています。

 

抗がん剤の開発、ひいては治験の歴史を紐解くと、およそ70年もの間に、細胞からタンパク質、DNAまでターゲットが狭められる、すなわち徐々にがん細胞のみを攻撃できるような薬剤が世に出されようと進化を続けているだけでなく、抗がん剤を投与される前にがんを治療できるような技術の開発が進められています。

 

抗がん剤の治験に特有なこと
 

このようにして次々と出てくる新しい抗がん剤は、治験を経て製品化されていきます。

抗がん剤の治験では、他の薬剤と同様に第I相から第III相まで実施され、効果や安全性が認められることで各国の規制当局(日本ではPMDA)に承認されます。

 

抗がん剤の治験に特有な事項としては、第一に、第I相の治験に参加する被験者さんのプロフィールです。

 

抗がん剤以外の薬剤の治験では、主に健康な成人男性が組み入れられるのに対して、抗がん剤の治験では、がん患者さんが組み入れられます。

 

その理由としては、前述してきた通り、抗がん剤は正常細胞までも標的としてしまうことが多く、副作用が出つつも効果のある投与量を求める必要があるためとされています。

 

実際に、抗がん剤の治験の第I相では、がんの縮小効果が認められる、かつ人体が耐えられる、すなわち副作用が許容できるレベルに収まるような投与量が検討されます。

 

この投与量をもって、第II相、第III相と治験が進められます。 抗がん剤の治験に特有な事項として、第二に評価項目が挙げられます。

 

抗がん剤の治験では、がんの縮小効果をRECISTと呼ばれる基準で評価を行ったり、毒性、すなわち副作用の評価としてはCTCAEと呼ばれる基準で評価がなされます。

 

これらの評価項目は、全世界で共通であり、国際的に共通の基準とされています。

 

また、その他の特徴として、抗がん剤が目指す最終目標が延命であることから、抗がん剤の投与後の観察期間が設けられており、比較的、長期間(2年前後)に渡って生存率や縮小効果が観察されます。

 

まとめ
 

これまで述べてきたように、抗がん剤および抗がん剤の治験は、その他の薬剤とは異なる点が多く、研究段階から治験の段階まで、高い専門性を持った人達が関与しています。

 

2019年現在では、まだまだ課題が残っている抗がん剤ではありますが、世界中で数多くの治験が実施中、あるいは計画中の段階にあり、今後もどんどん発展していく分野とされています。

 

 

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